2023.05.17 エンジニアズコラム 歴史 カメラ レンズ

第1回 カメラはどのようにして作られたか

カメラの歴史

こんにちは。皆様ご存知のとおり、ヒューテックは検査装置を扱っています。その検査装置は、検査対象物をカメラで撮影します。「物体を撮影する」というとカメラを使うのが当たり前ですが、あらためて「カメラがどのようにして作られてきたか?」と聞かれると、詳しく答えられる方は少ないのではないでしょうか?そこでカメラの歴史についてご紹介したいと思います。

 

皆様はカメラの構造というと、光を集める「レンズ」と映った像を記録するCCDやCMOSのような「センサー」を想像されるでしょう。近年カメラはデジタル化が当たり前になっていますから、映った像を見ることができる「画面」もカメラの一部のように思われるかもしれません。

しかし、一番初めに作られたカメラには、レンズもセンサーもなかったのです。

 

「見たい対象を映す方法」が一般的に知られるようになったのはルネサンス時代のことで、画家のスケッチに多数描かれています。当時のカメラは、「暗い部屋の壁に小さい穴が開いていて、穴から差し込む光が穴とは反対側に位置する壁に当たり、外の景色を映し出す」というピンホール現象(後述)を利用したものでした。当時の画家たちは壁の代わりにスクリーンを立てて、穴の反対側からこの像を記録していたようです。この機構はラテン語で「カメラ・オブスクラ(Camera Obscura)※暗い部屋」と呼ばれ、カメラの由来となっています。

カメラの原理

では、どうして小さな穴を通すと外の景色が映し出されるのでしょうか?もし、あなたが薄暗い部屋にいたとしても、窓の反対側の壁に像は映っていません。これには穴のサイズが大きな役割を果たしています。穴を通った光がどうなっているのかを、図1に記載します。

 

私たちの目は光を知覚しています。太陽や照明に照らされた明るい環境において、物体から反射もしくは透過した光を識別しています。物体の1点から出た光は、さまざまな向きに広がり空間を伝わって進みます。カメラ・オブスクラでは、物体からの光は壁によってほとんどが遮られますが、穴を通ることができた光が部屋の中に進み、穴の反対側の壁に当たって像として投影されます(図1)。この現象をピンホール現象と呼びます。

 

カメラ・オブスクラに使われる穴はピンホール(針先ほどの小さな穴)と呼ばれます。穴のサイズが大変小さいため、部屋の中に入るのは決まった向きの光に制限されます。光に直進性があることによって、物体とピンホールを結ぶ直線状に像が投影されます。図1に示すように壁に映る像は、上下左右が反転した倒立の像となります。

 

図1 物体から反射した光の進み方

 

像の明るさは、ピンホールを通る光の強さ(光量)に比例します。明るい像を映すにはピンホールを大きくすれば良いことになります。しかし、ピンホールが大きいと、さまざまな位置の光が混ざり合うため、壁に映った像はぼやけます(図2)。鮮明な像を壁に映すには、ピンホールを小さくすれば良いことになりますが、ピンホールのサイズに応じて光量も少なくなり、暗い像が映ります(図3)。カメラ・オブスクラで暗い部屋を使用していたのは、暗い像でも見えるようにするためだったのです。

 

図2 穴が大きい場合(ぼやけた像)

 

図3 穴が小さい場合(暗い像)

 

 

レンズの登場

このように明るく鮮明な像を撮影したいという要望を叶えるため、ピンホールの代わりに凸レンズが使われるようになりました。凸レンズは、通過した光を収束させる性質があります。収束する位置は物体の位置に対応しており、ピンホールと同様に壁に物体の像を映すことができます。この像は物体からの光をそのまま投影するピンホールの場合よりも明るく映ります。ただし、光が収束する位置(焦点距離)はレンズの形によって決まっているため、焦点距離付近に壁がなければ像は映らなくなります。鮮明な像を映すには、レンズと壁の距離を調節する必要があります(図4)。

図4 凸レンズを搭載したカメラ・オブスクラ

 

その後、正立の像が得られるように反射鏡を使用して像の向きを変えたり、望遠や広角など対象に合わせて複数のレンズを組み合せたり、さまざまな試行錯誤が行われて今日に至っています。より高解像に、より鮮やかに、より高速に、見たい検査対象物だけを抽出したいと常に新たな技術が求められています。お客様のご要望に合わせ、さまざまな工夫を凝らしてヒューテックのカメラも深化を遂げています。

参考文献

1. 永田信一、「図解 レンズがわかる本」日本実業出版社、(2002)

2. 桑嶋幹、「レンズのキホン」SBクリエイティブ株式会社、(2010)

3. Fiorentini,”Camera Obscura vs. Camera Lucida”, Max Planck Institute for the History of Science (2006)

4. E. Bouali et.al.,”Popularisation of Optical Phenomena; Establishing the First Ibn Al-Haytham Workshop on Photography”, ETOP (2005) spie.org

5. Eder, “History of Photography.” New York: Columbia University Press (1978). Open Library

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